父・中山秀征からもらった言葉
野球から俳優へ。ずいぶんと思い切った方向転換だが、そこには挫折もあった。
「大学に入る前は野球以外の道は考えていなかったんですが、これ以上、野球を続けても先はないという現実を、大学時代に突きつけられたんです。自分はスポーツ推薦ではなく内部進学で、強豪校なのですごい選手ばかりで。そこで将来の進路をどうしようと考えたときに、高校生の頃の記憶が蘇ってきて、俳優をやりたいってなったんです。そこに迷いはありませんでした」
長年、野球を続けてきてからの俳優宣言。しかし、家族は特に驚いた様子はなかったという。
「いきなり言ったんですけど、特に驚きもされず。それまで高校で野球をやるときも大学で野球をやるときも、自分からいきなり言い出していたので。両親も基本的に、自分が決めたことを責任と覚悟を持ってやるなら、自由にやりなさいというスタンスなんです。母親からは、簡単にやめたり投げ出したりしないようにとは言われました。父親からは、華やかな世界ではあるけれどそのぶん影の部分もある。2世だからと言われることもあるが、そこをわかったうえでやれと言われました」
ここから中山さんの俳優としての人生が始まった。
「フレッシュな風を吹かせたい」
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デビュー以来『下剋上球児』(TBS系)『おむすび』(NHK)と立て続けに話題のドラマへの出演をはたしてきた中山さんは、この3月に舞台『クレイジーレイン』に出演する。出演者は4人と少なく、歌やダンス、アクションもない会話劇だという。なかなかにハードルの高い作品、しかも初めての舞台とあって、苦労も多いようだ。
「稽古はまだ入っていないんですけど(取材は1月下旬)、ワークショップで演出の木下半太さんから指導をいただいています。今までは映像の仕事ばかりで、そこまで声を張ることがなかったので、苦労しています。リアルな声だけだとお客様に届かないので。まだ、ノドでしゃべってしまうところがあって、それで続けていると声が枯れてしまうので、そこをトレーニングするようにしています。あとは映像と違って、間違えてもリテイクができない一発勝負なので、そのための準備の大切さを学んでいるところです」
いろいろとまどいが多いようだが、この状況を楽しんでいるという。
「とまどいより楽しみの割合のほうが多いですね。新しいことをやるということが、もともと好きなんです。鳴っている音楽に合わせて芝居を変えたり、映像作品ではないことが多いので、いろいろ考えながらやっていくのを楽しんでいます」
共演する俳優は、みんな年上の先輩。年下なりの緊張があるようで……。
「まだあまりお会いできていないんですが、みんな優しいので大丈夫だと思います。自分は新人なので、フレッシュな新しい風を吹かせて、そこに良い作用が生まれればなと思っています」
舞台という経験を経て、中山さんがどう成長していくのか注目したい。
(つづく)
中山翔貴(なかやま・しょうき)
1999年東京都生まれ。幼少期から16年野球を続け、青山学院大学在学中には同大の硬式野球部に所属し、7年ぶりの東都一部リーグ昇格に貢献する。大学を卒業後は俳優の道に進み、22年のドラマ『しろめし修行僧』(テレビ東京系)で俳優デビュー。その後、『下剋上球児』(TBS系)、『おむすび』(NHK)などの話題作に出演する。また、格闘家の朝倉未来がエグゼクティブプロデューサーを務める映画『BLUE FIGHT〜蒼き若者たちのブレイキングダウン〜』に出演、25年3月には『クレイジーレイン』で舞台に初挑戦するなど、幅広く活動している。
(作品情報)
舞台『クレイジーレイン』
新宿シアタートップス
3月5日(水)〜3月9日(日)
脚本・演出: 木下半太
出演:中尾暢樹 池岡亮介 納谷健 中山翔貴(Wキャスト)真弓(Wキャスト)
主宰・企画・製作: WATANABE ENTERTAINMENT
公式サイト: https://crazyrain.westage.jp/