純度100%の楳図かずおさんを届けられた展覧会

「今回の展覧会は、僕の努力だけでできているというのが新しいんです。漫画でもアニメでも、できあがったものを届けるには、膨大な手間がかかりますよね。そういう余計なエネルギーを使っていないんです。もちろん展覧会も宣伝してもらったり、いろいろな人に協力してもらったりしていますが、作品を作るところは僕の努力だけでできていますから」

楳図かずお 撮影/冨田望

 他者の思惑などが入り込まない、純度100%の楳図かずおさんで、『ZOKU-SHINGO』はできあがっているのだ。

「ムダなエネルギーなくできたということは、ある意味でCHANGEだと思います。今は時代が大きな転換点を迎えています。そういうときには、エネルギーロスの少ないやり方に向かわなきゃいけないと思うんです」

 楳図さんの言う今の時代とは、インターネットやSNSが普及し、膨大な量の情報が錯綜する時代。そのようなときには、シンプルな方向に向かうべきだという。

「情報に影響を受けない自分たちの立場を、きちんと持たないといけないと思うんです。自分自身でシンプルにやる、自分の気持ちを突き詰めてやるということが、やっぱり大事だと思うんですよね」

 自身のオリジナルを突き詰めて創作してきた楳図さんは、長い休筆期間を経ても、変わらぬ姿勢を保っていた。

■楳図かずお(うめず・かずお)
1936年生まれ。和歌山県で生まれ、奈良県で育つ。小学校4年生で漫画を描き始め、高校3年生のときにデビュー。『へび少女』などのヒットにより、ホラー漫画の第一人者となる。一方で『まことちゃん』などのギャグ漫画を手掛け、『漂流教室』では、小学館漫画賞を受賞。ほかにも『おろち』『わたしは真悟』『神の左手悪魔の右手』『14歳』などヒット作を連発。タレント、歌手、映画監督としても活躍し、18年『わたしは真悟』で仏・アングレーム国際漫画祭「遺産賞」を受賞。23年手塚治虫文化賞特別賞を受賞している。
■楳図かずお大美術展ーマンガと芸術の大転換点ー
開催期間=2023年6月10日(土)~8月6日(日)
開館時間=10:00~17:00(最終入場は平常時間の30分前)会期中無休
会場=テレピアホール
住所=愛知県名古屋市東区東桜1-14-25 テレピア2F
チケット=前売り券:一般1400円 中高生700円・当日券:一般1600円 中高生800円