漫画界のカンヌとも呼ばれる国際漫画祭で受賞

「2018年にフランスのアングレーム国際漫画祭で『遺産賞』をいただいた、その瞬間に“やる”って思ったんです。それだったら、描き下ろしでやろうと。それまでも原画を展示する展覧会の話はあったんですが、そうではなくて新しく描こうと、勇気が一瞬にわいたんですね」

 アングレーム国際漫画祭は、漫画界のカンヌともいわれている権威あるもの。さらに「遺産賞」は、後世に残すべき作品に対して送られる。その評価は楳図さんの制作意欲を大いにかきたてたようだ。

楳図かずお 撮影/冨田望

「『遺産賞』でいただいたからですよ。普通の賞では新作を描こうとは思わなかったですね。だから、しっかりといいものを描いて、漫画ではない手法、美術ということでびっくりさせようと、それまでとは180度違う方向にいったんです」

『楳図かずお大美術展』は22年に東京と大阪、今年は愛知で開催されている。コロナ禍でのスタートであったにも関わらず、各会場大勢の来場者を数え、楳図さんの新境地を多くの人に届けることに成功した。

「若い人が多く来てくださっているんですよ。漫画からかけ離れた芸術で、圧倒させることができて、おかげさまでめちゃめちゃうまくいきました」

 そして、今回の展覧会は時代的にも、新しいものであるという。