「子どものときの感覚を今も大事にしてたらこうなった」

 その子どものころからの「なんか気になるフレーズ」が今になってギャグとして成立していくのは何があったのだろうか。

「いや、なんやろ……私の中ではわりとそうなんです。新喜劇でやってるギャグって、子どもの頃からやってたものが多いんですよね。“ボインボインボイン”もそうですし、“芋食って屁ぇこいて前進む”とかも、みんなそう(笑)。

 本当に子どものころやってたものを今、引き出しから引っ張り出してやってみたら、皆さんに“いいね”って言ってもらえて……。だから、私の中では、びっくりはしてないですね。子どものときの感覚を今も大事にしてたらこうなった、というか。だから逆に私はあんまり”CHANGE”してなくて申し訳ないです(笑)。子どものころから持ってた思いのままで今もやってるので。”CHANGE”すると逆にまずいのかなっていう感じもあるので、本当にそのまんまやってます」

 そのときそのときに自分がわくわくする、楽しいと思えることが表現のベースにあって、それを表現することが一連の珠代ギャグに繋がっているという。一方で、珠代さんを全国区にした「壁ぶつけ」のギャグ(壁に飛ばされ、ぶつかってみせるギャグ)は、新喜劇の歴代女優がやってきた伝統芸。これを担当することになったいきさつは……。

「あれは歴代の新喜劇の三枚目役の女優さんに与えられるギャグなんですけど、次に誰がやるか決めるということになって、20名ぐらいの女性が舞台上に呼ばれたんです。みんなずらっと並んで、その前を新喜劇の演出の方が右から左へ左から右へ、じーっと顔を見て、何往復もして最後に私の顔を見て“ブサイク役はお前や!”って指さされまして(笑)。

 なんかわかんないけど、“ありがとうございます!!”って言って深々礼をしたのを覚えてます。“今日から壁ぶつけはお前や!”って抜擢されて、そこからやらせていただくようになりました」

島田珠代 撮影/杉山慶五