升武さんのすばらしさ

 私はまだ考えながらやってるなって自分の中では思っているので、あの域に達するにはあと何年必要なんだろうと思いました。役者としてはそこが一番感じたところで、試写を見た後に、升さんに伝えました“そういうふうに見られるようになりたいです”って、素直に。升さんが歩きながら息子の詩をずっと語るところがあるんですけど、あのシーンは何度見てもどうしても泣いてしまいます」

 軽度の自閉症である美晴が向き合う現実を一番近くで受け止め、見守る母……説明すればそうなるが、そこに描かれるのは娘とまっすぐに向かい合う優しさと迷い。

「母親として見守っているところは見守っている。彼女が行動を起こすまで待ってあげられる存在であること、それを意識しました。でも、時として取り乱したり、慌てたりもする女性でもあり、その素直な思いは大事に演じさせていただきました。これは障がいを持った女の子の話ではあるんですけど、そこにあるのは家族の話ですし、親だからといって自立してるわけではないし、一人一人が自らの力で立つためには、周りの存在が大切なんだな、ということが伝わってくる映画だなと思っています。どなたにも、家族の中で悩むことは何かしらあると思うので、観ていただければ、きっと誰かに寄り添える作品になっているんじゃないかと思っています」