「アメリカの警察官の吹き替えならバッチリなんだけど」

 たとえば、2005年、韓国ドラマ『初恋』(NHK BS2)で、主演イ・スンヨンの吹き替えを担当したときのことだ。
 
「箱入りのひとり娘という役柄で、とってもキレイな方なんです。そこにドスの効いた声が乗ってしまい(笑)、求められるところにうまく到達できなくて。そのときのスタッフさんたちに、“アメリカの警察官とか、そういう役柄の吹き替えならバッチリなんだけどね”と言われて、じゃあなんで私に箱入り娘役をオファーしたのよー! って(笑)」
 
ーーたしかに、犯人をひねり上げながら「確保!」と言ってほしいです!(笑)
 
「ねえ(笑)。そんなこともあり、声だけで勝負するとなると、役の幅が狭くなってしまう声なんだなと、実感したんです」
 
 自分の声に自信がなかった。だからこそ「人前でお見せできるものではないとずっと思っていた」と話す須藤さんだから、ブロードウェイミュージカル『ピーター・パン』のオファーに対し、スムーズに頷くことができなかった。
 
「今回、なぜミュージカルをやったことがない私にオファーをしてくれたのかというと、“お母さんとして、ちゃんと地に足のついている役者さんに、ダーリング夫人を演じてほしい”という思いがあったそうなんです。そう思っていただいたのはうれしい一方、とはいえ、ミュージカルは未経験。しかも歴史のある作品ですしね。だから、私のほうからこんな提案をしたんです」
 
 須藤さんは今年2月4日、1日限りの音楽朗読劇『星の王子さま~きみとぼく~』に出演。王子役の声優・平野綾さんを相手に、飛行士役を好演した。
 
「この舞台上では歌を歌いました。“これを見に来ていただき、そのうえで、もう一度ご判断してください”と伝えました。いわば、自分からオーディションを提案したようなものですね」