『嵐にしやがれ』でメンバー5人の悩み相談

 唐突に登場した国民的アイドル嵐の松本潤さんだが、北方さんは2010年頃『嵐にしやがれ』(日本テレビ系)にたびたび出演していたのだ。

「一時期レギュラーで、あいつらにファーザーと呼ばれていたんですよ。俺が葉巻を持ってブランデーを飲みながら、あいつら5人の悩みを聞くんです。でも相談するのが嵐の連中なんだから、“寝相が悪いんですがどうしましょう”"ジーンズはいつ洗ったらいいですか”とかさ、嵐が本当の悩みなんて言えるわけがないんだから、そんな軽い悩みを言われてましたね」

ーーそれはそうですね(笑)。

「軽くないとまずいでしょう。それで5週間くらいやったかなあ。イヤになっちゃって。スタッフが一生懸命考えた嵐の悩みなんかじゃない悩みを聞いて、俺はエンターテイメントとして仕事していたけどね」

 時代に求められるように、「昔はテレビにいっぱい出ていた」という北方さん。「テレビにはなにかがある」というポジティブな意識がエネルギーとなっていた。

「テレビの世界にはなにかがあると思った。それは出てみないとわからないから。でも、なにもなかった。再生産だけありましたね。ヒットしたものをもう1度、手を変え品を変えやるという。だからつまらなくて、途中で辞めてしまったんです」

 やってみなければわからない。そんなシンプルな行動原理こそ、北方さんが常に現役で書き続けられるゆえんなのかもしれない。

(つづく)

北方謙三(きたかた・けんぞう)
1947年10月26日生まれ、佐賀県出身。1970年、「明るい街へ」で作家デビュー。1983年に『眠りなき夜』で日本冒険小説協会大賞、吉川英治文学新人賞受賞し、以降さまざまな文学賞を受賞。2013年には紫綬褒章を受章した。代表作はハードボイルド小説『檻』『逃れの街』や、『武王の門』を始めとする歴史小説、中国史の長編作品『水滸伝』『三国志』。『試みの地平線』(1988年)はいまなお語り継がれる人生相談界の雄。

【作品情報】
北方謙三、伝説の剣戟小説、日向景一郎シリーズ5か月連続刊行
「風樹の剣〈新装版〉」 日向景一郎シリーズ 1 定価:968円 (本体880円) 発売中
「降魔の剣〈新装版 」日向景一郎シリーズ 2 定価:880円 (本体800円) 発売中
「絶影の剣〈新装版 」日向景一郎シリーズ 3 定価:968円 (本体880円) 発売中
「鬼哭の剣〈新装版 」日向景一郎シリーズ 4 予価:990円 (本体900円) 4/9発売
「寂滅の剣〈新装版〉」日向景一郎シリーズ 5 完 予価:1,034円 (本体940円) 5/14発売

日向景一郎シリーズ一覧