自分が年を取ったと思いたくないから

 動いた分だけ、物語が生み出される。それは、北方さんの若さの源でもある。

ーーまず服装が年齢を感じさせませんよね。

「これはディーゼルですが、いやあね、若い連中にタメ張ってるだけです。なぜタメを張るのかって? 自分が年を取ったと思いたくないから。そう思うこと自体が“年を取っている”ということなんですがね。できないことがいっぱいありますしね。昔はこんなに体が動いたのかっていうくらい動いたし。たとえば昔、タモリさんがやっている番組のドラマコーナーに、ゲストとして出たことがありました」

 それは、1981年から1989年まで放送されたトークコントバラエティ番組『今夜は最高!』(日本テレビ系)でのことだった。

「相手役は吉行和子さんで、俺に殺される役が原田芳雄さんでさ。殴り合いをやるシーンがあって、ボコボコやっている間、ずっとカメラは回りっぱなしで撮っているわけで、体はずっと動いているんです。よく動いていたと思いますよ。最終的には俺が馬乗りで人を殴っているところを、うしろから原田さんに棒でボカーンと殴られて、俺は気絶するという」

ーーそれはタモリさんからのオファーだったんでしょうか。

「どうでしょうね。俺みたいな素人が出る番組なんだけど、1曲歌わなきゃいけないんです。人前で歌ったことなんてないし、事前にレッスンしてくれる人がいるんだけど、“ここだけ力を入れてましょう”とかいわれる。そうするとあまり音程を外さず歌うことができました。ときどき音程が狂うんだけど、“雰囲気があっていい”というのを、MJが言っていました」

ーーMJ……?

松本潤のね」