俳優としての焦りや不安、感じるすべてを“表現”に変えて──。

──10周年でこれからという時期でもあったかと。独立に不安や心配はなかったのでしょうか。

「ないと言えばウソになります。だけど、さまざまな局面で自分が感じる気持ち、オーディションに受からなくて悔しかったときの気持ちや、苦労したときに感じたこと、そうした経験のすべてを、僕はお芝居という“表現”に変えていきたいと思っています。“売れたい”という気持ちはもちろんあります。不安や焦りもあるけれど、そこにとらわれるんじゃなくて、お芝居にとらわれたい」

 そう、はっきりと宣言する姿に、“表現”への渇望が伝わってくる。

「ずっと不安です。だけど、自分が頑張れる作品を一つひとつやっていくことで、前に進める気がしています。そして、自分のカッコ悪いものも全部お芝居の中に詰め込むためにも、大きな船の中ではなく、自分で地に足をつけて、更地の状態から頑張りたいです」

 不安の中に身を置き、感じていくのは勇気がいることだが、表現者に必要な資質なのだろう。これからの活動も追いたいと思える俳優のひとりであることは間違いない。

金子大地 撮影/有坂政晴

かねこ・だいち
1996年9月26生まれ、北海道出身。「アミューズオーディションフェス2014」にて俳優・モデル部門を受賞しデビュー。以降、映画・ドラマ・CMに多数出演し、2018年の、ドラマ『おっさんずラブ』(テレビ朝日系)への出演で、ドラマ自体の人気とともに、自身の人気にも火がつく。翌年にはNHKのドラマ『腐女子、うっかりゲイに告る。』(NHK総合)で初主演を果たし、同作品で第16回コンフィデンスアワード・ドラマ賞・新人賞を受賞し、高い評価を得た。主な出演作に映画『殺さない彼と死なない彼女』(2019)『猿楽町で会いましょう』(2021)『先生、私の隣に座っていただけませんか?』(2021)『サマーフィルムにのって』(2021)ROMAN PORNO NOWW『手』(2022)『ナミビアの砂漠』(2024)などがある。大河ドラマ『鎌倉殿の13人』『育休刑事』(NHK)『晩餐ブルース』(2025)など。