日本初のラジオの女性DJであり、数々のヒット曲を生んだ作詞家。日本作詩家協会元会長、現顧問の音楽評論家。日本のエンタメ界を昭和・平成・令和と先導する湯川れい子さんが新著『私に起きた奇跡』を刊行した。この中で「私の仕事は、『元祖・推し活です』」と自ら評するように、エルヴィス・プレスリーをはじめ、歴史的なスーパースターを「推し」続けてきた70年余り。バイタリティ溢れる湯川さんの「推し活」ヒストリーはもちろん、昭和を彩った名曲のエピソードなどもたっぷりと語ってくれた。【第1回/全5回】

湯川れい子さんの音楽人生を振り返るとき、欠かすことができないのがエルヴィス・プレスリーの存在。最初の「出会い」はラジオのFEN(Far East Network=極東放送網)。その衝撃は今も鮮明に残っているという。
「忘れもしない1956年の冬。私は1月22日が誕生日ですから、私の誕生日を過ぎたぐらいだと思うので、ちょうど20歳になったころですね。FENで何げなく音楽を聴いていたら、エルヴィスが流れてきて。もう呆然と立ち尽くして、“何?これは!”って。耳の後ろがシュワシュワと泡立つような、聴いちゃいけないものを聴いた感覚になりました。恥ずかしいような……こんなもの一人で聴いていいの?……なんで私はここで突っ立って聴いているの? みたいな、そんな感じでしたね。それはびっくりするほどセクシーな声でした」