子どものころから音楽が身近だった

 そのとき聴いた曲は、のちに名曲『ハートブレイク・ホテル』だったことがわかる。湯川さんの「推し活」ヒストリーは動き出す。「エルヴィスに一目会いたいと思って、会えたのは1971年末。15年かかりました」と昨日のことのように語る。

 そうなると、やはり「CHANGE」はその瞬間ということになりますか?と尋ねると、「エルヴィスに会ったのも大きい出来事だけど、もっと以前かもしれない」と話す湯川さん。このエルヴィスの魅力に引き込まれるだいぶ以前、子どものころから音楽に囲まれた豊かな環境が「CHANGE」の大もとだったという。

「父も母も音楽が好きで、とくに父は尺八をたしなんでいて、中秋の名月の日などは、必ず目黒の家の縁側に分厚い大きな座布団を置いて、月を見ながら尺八を吹いてたんです。母はその後ろでお琴を弾いてましたね。時によっては三味線を弾いていたり。その後ろの部屋にはピアノがあって、それを戦死した長兄とか、私の一回り上の姉が即興でピアノ伴奏をしていました。

 家の中には戦争前から音楽があふれてました。そういう土壌があったからこそ、ポンとエルヴィスが降りてきても、ハリー・ジェームス・オーケストラが降りてきても、全部受け入れられたんだと思います」