報道と政治は困った人の為にある
『金子信雄の楽しい夕食』でブレイクする前に、西日本ネットのローカル局で担当していた情報番組のディレクターから「報道と政治は困った人の為にあるんだよ」と教えられた。
「この番組は視聴率が期待通りに振るわなくて終わってしまったんですけど、専門家でも何でもない私が困った人の為になる仕事が出来るかもしれない……これはすごいことだなと思ったんです。だから私は、自分の名前が世に出るようになったら、“私”を活用しようと思っていました。そのために芸能界でずっと売れ続けたいと思ったんです。『17歳の白血病の少年』を観たことでスイッチが入りました。なので、骨髄バンクのスタッフの人たちに“ちづるさん、広告塔みたいになってて申し訳ない”と言われたときには、“どんどん広告塔にしてください”と自分からお願いしたんです」
当時は阪神淡路大震災よりも前で、ボランティア活動をすると「好感度UPですか?」「出馬するんですか?」などと言われたりもしたという。
「『東ちづるのパフォーマンス』とディスられたりしてストレートに受け止めて貰えなかったから、最初は水面下で医療関係のボランティアを続けていたんです。最近ようやく社会もアップデートしてボランティアや社会的活動も理解されるようになってきたので、いまは堂々と出来るようになったと思います」
──社会が変わってきたと感じるようになったのは、いつ頃からだと思いますか。
「ハリウッドでセクハラを訴え始めたぐらいからですかね。女性たちが立ち上がってプロデューサーを訴え、その運動が日本社会にも大きな影響を与えましたよね。そして、セクハラやパワハラという言葉が浸透し、やがて#MeToo運動も広がっていった。そういった言葉がなく、表現方法がなかった時代、私たちはそれを笑ってすり抜ける術が社会を切り抜ける力だと思い込んでいたんです」
33年前に観た「白血病の少年」の声なき声が響き、それが大きな「THE CHANGE」となり、今日まで芸能界で表舞台に立ちながら社会福祉の活動を続けている。
(つづく)
東ちづる(あずま・ちづる)
広島県生まれ。会社員を経て25歳から芸能活動を始める。料理番組『金子信雄の楽しい夕食』(朝日放送)で初代アシスタントを、テレビドラマ『温泉若おかみの殺人推理』(テレビ朝日系)では23年間主演を務める。プライベートでは骨髄バンクやドイツ平和村、障害者アートなどのボランティアを30年以上続け、2012年に誰も排除しない“まぜこぜの社会”を目指す一般社団法人「Get in touch」を設立し代表として活動中。2024年公開の映画『まぜこぜ一座殺人事件~まつりのあとのあとのまつり』では企画・構成・プロデュース・出演と一人4役を務めた。公開待機作品に『シケモクとクズと花火と』がある。著書の「妖怪魔混大百科」(ゴマブックス)を基に、今夏以降、マンガやマスコット等展開予定。
●7/27(日) まぜこぜ一座「月夜のからくりハウス~楽しい日本でSHOW!?~」渋谷区「さくらホール」にて開催。
【作品情報】
映画『真夏の果実』
出演:あべみほ 奥野瑛太 佐野岳 小原徳子 東ちづる 仁科亜季子 他
脚本:松本稔
監督:いまおかしんじ
5月17日(土)より東京・新宿K‘s cinema ほか全国順次公開
配給宣伝:ムービー・アクト・プロジェクト
(c)2025「真夏の果実」製作委員会
公式サイト: https://www.legendpictures.co.jp/movie/midsummer_fruit/