『ポケモン』の名前を聞くだけで、その特徴がわかる。『プリキュア』たちの名前には明らかに多く出現する音がある。『呪術廻戦』『鬼滅の刃』のキャラ名、『ドラクエ』の呪文にも法則が存在する。「にせたぬきじる」と「にせだぬきじる」の違いは小学生でも知っているーー。
おもしろすぎる日本語を分析する言語学者・川原繁人の活躍は、まさに縦横無尽だ。『フリースタイルダンジョン』に出演し、慶應義塾大学で教壇に立つ彼の「THECHANGE」とはーー。
SNS上で驚くべきことが起きた
「自分で言うのもなんなんですけど、執筆依頼が止まらないんですよ」と、川原繁人さんは笑った。2023年はすでに3冊出版が決まっているというが、大学で教えるバリバリの研究者としては異例のペースではないだろうか。
「去年から、おかしなことになりはじめたんですよね。一気に声をかけていただく機会が増えました」
その依頼激増のひとつのきっかけとなったと思われるのが、2017年に出版した『「あ」は「い」より大きい!?—音象徴で学ぶ音声学入門』という著書だった。
「『「あ」は「い」より大きい』は、今でこそ多くの人に読んでもらっていますけど、あれは企画会議で何度蹴られたか分からないっていう本だったんです。
1冊目の岩波科学ライブラリーの本は2015年の年末ぐらいに出したんですが、その時は出版に関しては何も分からないから、とりあえず書いて、あとは編集者が面倒をみてくれた、っていう感じだったんですよね。編集者が偉い人だったらしく、企画会議とかそういう報告なしに、とりあえず出版まで進んでしまいました。
で、調子に乗って2冊目を書いちゃったんですよ。『「あ」は「い」より大きい』の原稿です。本を書くのに、先に企画会議を通しておかなきゃいけないっていうのを知らなくて、持ち込みの形になっちゃったんですよね。
それでいろいろな出版社から蹴られまして……最終的には、ひつじ書房っていう言語学専門の出版社から出してもらったんです」
そして、この著書をめぐっては、SNS上で驚くべきことが起きたという。
「私が去年、ツイッターで、“この本が出てから5年たったし、文庫化したいな”って呟いたんですよ。そうしたら、@tawara_machiっていうユーザーから、“私でよければ、解説書きます”ってツイートが来て……。いや、まさか本人だとは思わないですよね。普通に考えたら。
でも、プロフィールをチェックしてみたらフォロワー数が25万人ぐらいいるんですよ。
これは間違いない。本物の俵万智さんだ、フェイクアカウントじゃねえなと思って」