今日もまた、作品に、芝居に、観客に真摯に向き合う

 シェイクスピア作品は、『ヘンリー六世』(2009)、『リチャード二世』(2020)などに出演し、2024年に上演した『ロミオとジュリエット』では、上演台本・音楽・演出を担当している。

「ぼくがやる舞台は、まず子どもがわからないとダメ。それに日本語がわからない人にも、目が見えない人にも、耳が聞こえない人にもわかってもらえる作品にするには、どうしたらいいのか? というのがスタート地点なんです」

 それは、お客さんに楽しんでもらいたい、という思い?

「理解してもらいたい。つらいということはどういうことなのか。人が死ぬということが、どれほど苦しいのか。人を殺すということが、いったいどういうことなのか。愛がどれだけ大切なのか。演劇を通して、ほんの少しでもいいから理解に近づいてほしい」

 それは、身を削るような作業ではないのだろうか……。

「どうかな、芝居はある意味、健康的ですよ。稽古の時間は決まっているし、公演期間はさらにしっかりタイムテーブルが決まっている。それに比べたら、映像の仕事は不健康ですよね。何時に終わるかわからないなんて、いまとなっては耐えられない(笑)」