納谷悟朗さんに「お前の作品なんだから」と
――そんな感じだったんですね。
「でもそこから何年後だったか、ちょっと思い出せないんですけど、(初代、銭形警部の声優を務めた)納谷悟朗さんから“これはお前の作品だから、お前が決めろ”みたいなことを言っていただいた時があって。そのとき、たしか僕は“オレの作品なんですか?”と返したんですが」

――“決めろ”というのは。
「映像が全然できあがっていない段階でアフレコをしなければならないときがあって、全然映像の意味や感じが伝わってこなかったんです。プロの声優のみなさんはそれでも慣れてらっしゃるけれど、僕なんて、その頃まだ年に2日くらいしか声優のお仕事をしてませんでしたし、全く意味がわからなかったんです」
――想像でしかありませんが、とても難しそうです。
「先輩たちも、“これはちょっとひどい。オレたちもこんな状態でやったことはない”みたいな時があって。それで、このまま続けるのかどうするのかとなったときに、“お前が決めろ”と。“僕が決めるんですか?”と言ったら、“お前の作品なんだから”と言われて。そこでなにかハッとしたというか」
――おおお。
「言い方は変ですけど、それまではあくまでも代理という感覚でいて、正直“なんでオレがやってるんだろ”という気持ちがあったと思うんです。もちろんやっているときは一生懸命だし、全力なんですよ。でも“無理ですよ”という部分が、どこかにあった。だけどそのときに“お前の作品なんだから”と言ってもらったことで、“そうか、主人公をやるってそういうことなんだ”と、気持ちの上でのCHANGEがありました」
そのおかげで、いまもアニメのルパン三世がこうして生きている。
(つづく)
栗田貫一(くりた・かんいち)
1958年3月3日生まれ、東京都出身。ものまねタレント、俳優、声優、ナレーター。1983年に『発表!日本ものまね大賞』(フジテレビ)にてデビュー。同局での『ものまね王座決定戦』でともにその人気・実力を競い合った清水アキラ、グッチ裕三、モト冬樹、コロッケと「ものまね四天王」と呼ばれ、「ものまねブーム」をけん引。一世を風靡した。1995年より担当している、人気アニメシリーズ『ルパン三世』の主人公、ルパン三世の声優としても知られる。
●作品情報
『LUPIN THE IIIRD 銭形と2人のルパン』
原作:モンキー・パンチ
監督:小池健
脚本:高橋悠也
音楽:ジェイムス下地
クリエイティブ・アドバイザー:石井克人
アニメーション制作:テレコム・アニメーションフィルム
製作・著作:トムス・エンタテインメント
声の出演:栗田貫一、大塚明夫、浪川大輔、沢城みゆき、山寺宏一、堀内賢雄
公式サイト: https://www.lupin-3rd.net/zenigata-twolupins/