富山の空気は京都のほうが近い

――今回は京都の物語ですが、室井さんというと、地元である富山愛が強い印象です(2023年4月1日からは富山県富山市にある高志の国文学館館長を務めている)。富山にも京都に近いと感じる部分はありますか?

「東京と近いか京都と近いかと言われたら京都でしょうね。食べ物の味も京都の方が近いし、家のことでも、私なんかも“室井の10代目”なんですが、“あそこの誰々の何代目”みたいなことを言う土地柄ですね。アパートやマンションも今は建ってますけど、もともと一軒家の古い家が多くて、お座敷や土間や土蔵があったりします。家の造りみたいなものも似てますね」

――そうなんですね。ただ本音と建前というところでは、室井さんのイメージ的には「本音をズバッと言う」感じがあります。

「それは私のイメージであって、富山の人は言いません。やっぱり映画に描かれているような京都と同じような感じだと思いますよ。それにそもそも私も、今はそういう“ズバッと”した感じに思われるかもしれないけれど、昔は違いましたから。裏表とはまた違いますけど、うじうじタイプでした。平成元年から一緒に仕事しているうちの社長が浅草の人で、“室井さんは、いつもうじうじしていてはっきりしない”と言われ続けてました。イエス、ノーをはっきり言わない。この仕事を続けて、イエス、ノーをはっきり言うようになったのかなと思います」

 仕事が人を作るというが、室井さんの性格も、俳優としてのキャリアを重ねるとともに作 り上げられていったということか。

●作品情報
『ぶぶ漬けどうどす』
監督:冨永昌敬
企画・脚本:アサダアツシ
出演:深川麻衣、小野寺ずる、片岡礼子、大友律、若葉竜也、松尾貴史、豊原功補、室井滋
配給:東京テアトル