「キャリアを重ねても、作品を経るたびに自分の中のバージョンが変わるような感覚があります」

――例えば、今回の映画『フロントライン』の出演を経て、ご自身の中で何が変わったと実感することはありましたか?

「それは考え方や経験なので、これも簡単に言葉にするのは難しいんです。誰かの人生をたった2時間に凝縮して請け負う。そこには長い長い思考や感情や経験の旅があります。それが自分の仕事ですが、どんなにキャリアを重ねても、作品を経るたびに自分の中のバージョンが変わるような感覚があります」

――今まで様々な作品や役を演じてこられましたが、その都度、ご自身がアップデートされていくような感覚なのでしょうか。

「そうです。アップデートですね。毎回CHANGEしています」

――待機作には、26年度のNHK大河ドラマ『豊臣兄弟!』の出演も控えていますが、1963年度から放送されている歴史ある長編ドラマシリーズへの出演は、ご自身にとって新たなCHANGEとチャレンジになりそうですね。

「これまで経験したことがない撮影の長さです。そういう意味では、何段階もアップデートするのかもしれませんね(笑)。やはりこれだけの期間をかけて一人の人物の生涯を演じることは、これまで経験がないですし、そのことをちゃんと経験してきたいなと思っています。

 この国の文化といえる作品に関わることができて光栄ですし、映画から少し距離ができてしまうことが今からもう寂しくはありますが、なかなかない経験を存分に楽しんで、毎週楽しみに見て頂けるよう精一杯やってきたいと思っています」

池松壮亮 撮影/有坂政晴