現時点での今年のベスト映画
――映画や音楽、小説などの創作物で何か影響を受けたものはありますか?
「たくさんあります。映画や音楽や小説が好きでこの仕事をやっているので絞るのは困難ですが、影響を受けた沢山のもののひとつひとつから様々なものを吸収して、ここまで生きてきたのかもしれません。
中でも当然映画に一番触れてきました。代わりに今年の今のところのベストを挙げると『教皇選挙』かなと思います。ストイックで誠実で、あまりに面白い映画でした。今タイムリーに話題となっているコンクラーベ(※)というものの実態を初めて知ることもできました」
※コンクラーベはローマ・カトリック教会の最高指導者である教皇を決めるために行う投票のプロセスのこと
――『教皇選挙』のどんなところに面白さを感じましたか?
「余計なことがないんです。そぎ落としてそぎ落として、ストーリーだけであそこまでドキドキさせられて、なおかつ、今の人類の様々な問題を内包しながら見事なフィクションを仕上げていて、会話ひとつひとつ、物語の展開、撮影照明、俳優の演技、全てが調和していて圧巻でした」
――やはり同じ畑の人としては“そぎ落とされたものの美学”のようなところに惹かれるのでしょうか?
「惹かれます。音楽はわりとつけてあった印象がありますが、俳優たちはもちろん、カメラや照明などがストーリーを動かすための役割になっていません。それであれだけ引っ張れるこの映画の力に面食らいました」
おすすめの作品を尋ねると、即座に返ってきたのが『教皇選挙』だった。その魅力を語っている時の池松さんがとても楽しげで、聞いている方もなんだかワクワクした。また、大河ドラマで豊臣秀吉を生き切った池松さんが何を感じて、役者として、人としてどんなバージョンアップをするのか。その山を越えた時の思いを、またどこかの機会でぜひ聞いてみたい。
取材・文/根津香菜子
いけまつ・そうすけ
1990年7月9日、福岡県生まれ。2001年、劇団四季ミュージカル『ライオンキング』のヤングシンバ役でデビュー。トム・クルーズ主演『ラスト サムライ』(03)でスクリーンデビュー。その後数々の映画やドラマに出演し、数多くの映画賞を受賞している。昨年は映画『ぼくのお日さま』、『ベイビーわるきゅーれ ナイスデイズ』、『本心』が公開され、今後の待機作としてNHKで8月に放送される『終戦80年ドラマ シミュレーション 昭和16年夏の敗戦』、映画『THE オリバーな犬、(Gosh!!)このヤロウ MOVIE』、さらに26年度NHK大河ドラマ『豊臣兄弟!』が控える。
『フロントライン』
監督:関根光才、企画・脚本・プロデュース:増本淳、
出演:小栗旬、松坂桃李、池松壮亮、森七菜、桜井ユキ、美村里江、吹越満、光石研、滝藤賢一、窪塚洋介
https://wwws.warnerbros.co.jp/frontline/
6月13日(金)より全国公開中