1970年代から俳優として活躍。映画『遠雷』で日本アカデミー賞主演女優賞。その後『釣りバカ日誌シリーズ』や、様々なドラマに出演。1993年に発行された写真集『罪』は大きな話題となった。それぞれの時代にインパクトを残してきた石田えりさんが今回挑むのは「松山ホステス殺人事件」で指名手配された福田和子を基にした映画『私の見た世界』。主人公を演じるとともに、長編映画としては初の監督にも挑んだ。作品に向き合う日々の思いを飾ることのない言葉でまっすぐに語ってくださった。【第1回/全3回】

1982年の「松山ホステス殺人事件」で指名手配された福田和子。顔と名前を変え、15年近く逃走を続けた彼女を基にした本作『私の見た世界』。俳優・石田えりさんにとって、長編映画としては初監督作品となる。この題材を選んだ思いとは。
「彼女のことを書いた本を読んでいて、頭の中に場面場面の映像が浮かんできたんです。その時は“映画にしたい”という思いはなかったんですけど、時々本を読むとそういう“映像が浮かぶ”みたいなことはあって、たぶん意識が作るほうに向かっている時期だったこともあって。“あ、映画にしたら面白そうだな”ってどんどんそう思うようになって…という感じでした」
2019年に短編映画『CONTROL』で監督デビュー。その時から監督業の難しさは感じたという。
「最初に短編映画を作った時にまず感じたのは、自分の伝えたいイメージを実際の形にしていくのは“こんなに難しいんだ”っていうのを思い知りました。“これは大変な世界だぞ”、と。でも、それでも性懲りもなく(笑)、コツコツ台本を書いてはいて。3本ぐらいかな? 書いた中で、これ面白いんじゃないかと一番取りかかりやすいというか、予算的にも、1回目めとしてはこれがいいのでは、と思ったのが福田和子の世界だったんです」