心折れずに最後までやり切ることはできた

 取材の現場を和ませようという自嘲気味な言葉だとは思うが「いや、気のせいかも知れないけど、徐々に不登校気分になりましたから(笑)」。様々な映画やドラマの現場を知る石田さんが感じ取った現実だろう。

「最初の顔合わせがあって、本読みというのがあるじゃないですか。そこでだんだんチームになっていくんですけど、そういう時間もないので、今日からよろしく、みたいなところでいきなり作り上げていく感じ。でも、このままの距離感で入っちゃうと、このまま終わるぞって。10日しかない撮影期間、あっという間だぞ、というのはわかったので、1回思いをわかってもらう必要があるなと思って、“ちょっと話したいことがあるんで、自分の思いを話しますね”ってところから入ったんです。そこから始めました。
 思いが伝わった…のかどうかはわからないけど(笑)、皆さんやってくれたし、私もブレずに、心折れずに最後までやり切ることはできたかな、と。でもまぁ大変でした、ホント大変」

 「大変」を何度か繰り返した石田さん。しかしそこには笑顔が。映画作りの「大変」は至極の時間ではあったのは伝わってきた。

(つづく)

石田えり(いしだ・えり)
熊本県出身。『遠雷』(80年/根岸吉太郎)で日本アカデミー賞優秀主演賞と優秀新人賞を受賞。「第41回カンヌ映画祭」コンペティション部門出品の『嵐が丘』(88年/吉田喜重)、「第64回ヴェネチア映画祭」オープニング作品『サッド ヴァケイション』(07年/青山真治)などに出演。ヘルムート・ニュートンが撮影した写真集「罪ーimmoraleー」(93年)も大きな話題を呼んだ。19年に短編映画『CONTROL』を初監督。『G.I.ジョー・漆黒のスネークアイズ』(21年/ロベルト・シュヴェンケ監督)でハリウッドデビュー。

●作品情報
『私の見た世界』
監督・脚本・編集:石田えり
主演:石田えり、佐野史郎、大島蓉子ほか
公式サイト:https://watashinomitasekai.com/
製作/配給:トライアングルCプロジェクト
(c)2025 Triangle C Project