「ほぼ遭難みたいな感じです」

「出演者と番組スタッフで東京で一番高い雲取山の頂上に行ったんです。ウッチャンナンチャン、キャイ~ン、勝俣(州和)くん、あと女の子1人と私で。みんなマネージャーはいなかった。

 行きはヘリコプターで山頂に降りて、帰りもヘリコプターに乗る予定だったのに、悪天候で飛ばないって言われて。8時間くらいロケをしてボロボロ状態だった後で」

 時刻はすでに夕方。ヘリコプターで帰る予定だったため、みな軽装で、照明はカメラマンが機材を確認するために使用する極細の懐中電灯が3本だけだったという。

「ほぼ遭難みたいな感じです。誰も下りたことがない道を、一番前と真ん中、一番うしろのADさんが持った懐中電灯だけを頼りに、雨のなかさまようように歩き続けて……。右側が山肌、左側が崖みたいな細い道を歩いて、ときどき、ズルズルーッ! という音がして、“誰か落ちたぞ! 大丈夫か!”って声が聞こえてきて。道に雨が溜まってる中を進んでいく、みたいな」

ーーとんでもない事件じゃないですか……。

「そういう状況で、8時間くらい歩き続けたのかな。ウンナンさんも、キャイーンさんもタレントもみんな。もう一歩も歩きたくなかったけど歩かないと死んじゃうし、と思って、私ともう一人の女の子、ずっと黙々と歩いていたら、“女の子なのにちゃんとついてきて偉い”みたいに言われて。

 いや、偉いっていうか、歩かないと死んじゃうし、喋ると体力なくなるから黙ってただけなんだけど」

ーーそうですね。

「それで”偉い!”と思われたことと、そんな目に遭わせたというお詫びだったと思うんだけど、それ以降の普通のロケに何度か呼んでもらって。ウッチャンナンチャンともキャイーンとも、みんなとは一緒に遭難を乗り越えた仲間、みたいな関係になっていたから、番組でやりたい放題できて。

 それがおもしろかったのかわからないけど、気づいたらレギュラーになっていました」

 壮絶な体験を軽妙に話してくれた千秋さん。これが『ウリナリ』での活躍と『ポケビ』へとつながっていった「THE CHANGE」のひとつだった。

千秋(ちあき)
10月26日生まれ、千葉県出身。1991年にオーディション番組『ゴールドラッシュ!』(フジテレビ系)の初代グランドチャンピオンになると、翌年には『ウゴウゴルーガ』(同)内アニメ『ノンタンといっしょ』で唯一無二の声優として知名度が急上昇。1995年に『ウッチャンウリウリ!ナンチャンナリナリ!!』(日本テレビ系)でポケットビスケッツを結成。多くのヒット曲を生み、ブームを巻き起こした。ファッションアイコンとしても知られ、自身のブランドも展開。chiaki名義で2023年7月7日にパッパラー河合と制作した新曲『アオゾラ』を配信スタート。