「もう死ぬんだな」と…。その後の記憶がない

「カツオの一本釣りですから、遠洋漁業というか、岸から2時間くらい出た沖に行くんです。手作り感満載の木堀りの船で。それには撮影のために漁師ふたりと僕だけが乗って、カメラマンたちは大きな船。ロープで僕の船と繋いでいました。毎回シケがすごくて、結局撮影できずに帰ってきていました。あるとき、大嵐に遭遇して、ロープが切れちゃったんです」

――なんと!

「僕が乗っている船はエンジンもなにもない。流されるだけです。つまりは遭難です。ライフジャケットも着てませんでしたし、“もう死ぬんだな”と。そこからは記憶がありません。気づいたときには港でした」

――転覆はせず?

「はい。ただ遭難してから、港に着くまでの記憶がないんです。いまだから笑えますけどね。死を覚悟した瞬間でした」

 危機回避からのブラックアウトだったのだろうか。何があったのかを考えると怖いが、スリランカの旅から30年。フル活動を続ける原田さんにとって“チェンジ”とは何なのか訊ねると次の答えが返ってきた。

「僕にとってチェンジは毎日です。良し悪しはさておき、人間はチェンジするために生まれてきているのかもしれませんね」

 なるほど。俳優、司会者、タレント、作家、YouTuber、ブロガーと、多彩な活躍をし続ける原田さんの太い柱が垣間見えた。

(つづく)

原田龍二(はらだ・りゅうじ)
1970 年10 月26 日、東京都生まれ。90 年に「第3回ジュノン· スーパーボーイ· コンテスト」で準グランプリを受賞。92 年、ドラマ『キライじゃないぜ』で芸能界デビューを果たす。1996年、映画『日本一短い「母」への手紙』で日本アカデミー賞新人俳優賞受賞。ドラマ、映画をはじめ、バラエティーや旅番組でも活動。主な出演作に、5代目佐々木助三郎役を演じたドラマ「水戸黄門」、「相棒」シリーズ、映画『一月の声に歓びを刻め』、『太陽とボレロ』、舞台「大奥」シリーズなど。最新映画として主演を務めた『ハオト』が公開。ワイドショーのMCやバラエティ番組でも活躍。YouTubeチャンネルをはじめ、SNSも積極的に更新している。

●作品情報
『ハオト』
監督・脚本・プロデューサー:丈
出演:原田龍二、長谷川朝晴
木之元亮、倉野尾成美(AKB48)、村山彩希、三浦浩一、片岡鶴太郎(特別出演)、高島礼子
配給:渋谷プロダクション 製作 JOE Company
公式サイト: https://haoto-movie.com/