店での食事は趣味の世界に
みんなで飲む、食べる機会が極端に減った今後、外食はどうなるのだろう?
稲田「その中でわざわざ食べにいくものってどういうものかというと、それは無難でもなければ安心感のあるものではなくて、食べることがひとつの趣味になっているもの。良くも悪くもレストランに行くという行為は、純粋な趣味の世界になっていくと思うんです。日常的に使うチェーン店は別です。今は1000円出せば、十分に不満のないものが食べられる。でもそこで、5000円払う人たちというのは、言ってしまえばオタクなんですよ」
今後は、日常的に食べるチェーン店の外食と、趣味として楽しむ外食、二極分化していくようだ。
稲田「そうなったら、お店はかつて合コンのために用意していた、無難で当たり障りのない料理はださないほうがいい。そこに自分とその店の個性を出して、共感してくれるファンを集めていくしかないんじゃないかと、そうするしか外食の個人店が生き残っていく術はないんじゃないかと思います」
その一方で、マニアばかりが集まる店にはしたくないと言うのが、面白い。
稲田「自分の理想というのは、たとえばインド料理に対して関心が強い人たちと、特にそうでもない、ふわっと来てくれる人たちが混在しているお店でありたいんですよね。マニアだけが集まっても、なにも変わらない。両者が融和している世界を作っていきたいんです」
それは、素材と素材を合わせ、別のおいしいものを作り上げていく、料理そのものと言ってもいいだろう。