変えるものと変えちゃいけないもの
最後に稲田さんにとって「変化」とはどういうものかを聞いてみた。
稲田「飲食業にいえることですが、変化し続けなければ、絶対に生き残れないという確信を持っています。よく老舗の飲食店が“変わらない味”と評されていますけど、実はちょこちょこと変えているということがあるんです。よく聞く話ですけど、自分も5年、10年、短いスパンですけど、それでも変えていかなきゃならないというのは、痛感していますね」
それと同時に、絶対に変えちゃいけないものがあるということにも、うすうす気づいています。ただ、なにを変えるべきでなにを変えてはいけないのかは、はっきり分からないんですよ」
変えるも変えないも、結局、それを判断するのは食べる客の側。作る方からでは、なかなか判断しづらいところがあるのだろう。
稲田「店をやっていくうえでの最終目標は、自分たちの店がもうあと40年とか続いて、老舗になることですね。ビジネス的に言えば、飲食業はもっと短期で回収して次の事業を始めるというのが理想なのかもしれませんが、それは自分に合っていないと思うので。そのためにも変えないことと変えることは大切だと思います」
飲食業界を変えてきた稲田さんが、今度はなにを変えていくのか、これからも注目したい。
プロフィール
稲田俊輔(いなだしゅんすけ)
料理人・飲食店プロデューサー。鹿児島県生まれ。京都大学を卒業後、飲料メーカー勤務を経て、円相フードサービスの設立に参加。和食、ビストロ、インド料理など幅広いジャンルの飲食店を25店舗、展開。2011年には東京駅八重洲地下街に南インド料理店「エリックサウス」を開店し、日本のカレー業界を一変させた。ナチュラルボーン食いしん坊を自称し、著書も多数、手掛ける。近著は『ミニマル料理: 最小限の材料で最大のおいしさを手に入れる現代のレシピ85』(柴田書店)、『「エリックサウス」稲田俊輔のおいしい理由。インドカレーのきほん、完全レシピ』(世界文化社)、『食いしん坊のお悩み相談』(リトル・モア)