萩本欽一と明石家さんま
「萩本欽一さんの舞台っていうのも、めちゃめちゃ大きな出来事ですね。東八郎さんの十三回忌公演があって、そのときにくりぃむ(しちゅー)のアリペイ(有田哲平)とか、X-GUN の西尾(季隆)さんとか、『ボキャブラ』ブームが終わっちゃって、みんなそんな忙しくないっていうのもあって、舞台に呼ばれたんです。僕もまだ20代後半だったのかな。だから尖ってるというか、欽ちゃんって大御所だけど、僕らのほうが若いし絶対センスいいじゃん、とか思ったんです(笑)。小学生の時に見てた人だから、かつての人でしょう、みたいな。でも、ご一緒したらめちゃくちゃ面白かったです。あんな画期的なネタ見せはなかったですね。それまでのテレビやライブのオーディションだと、ネタ見せで“今のはこうだね”みたいに偉そうに意見されたりしてたけど、大将(萩本欽一さん)の場合は、“あれさ、あそこあるじゃん”って言って今僕らがやったネタを自分が目の前に出てやるんですよ。そんな人いないじゃないですか。大将のあれは画期的でした。超楽しかったです。
大将は、ずっと大喜利の連続というかテストみたいな感じなんですけど、それがすごく楽しくてわくわくしてやってたら、大将が“土田もね、4公演、全部違うセリフ言って”って突然言うんですよ。言わなきゃいけない言葉はわかってるから、そのニュアンス全部変えて言ってみて、って。いやあ、わけわかんなかったけど、毎日がすごく楽しかったですね」
テレビっ子だった土田さんが、子どもの頃見ていたレジェンドの方とは他にも大きな出会いがある。
「あと一番恩義を感じてるのは(明石家)さんまさんです。僕がしんどいときに番組のゲストに呼んでくださったんですよね。一番最初は『明石家マンション物語』(フジテレビ系)っていう番組で、オーディションのコーナーがあって、そこに出て受かったんですよ。普段は若手しかいないんですけど、なぜかその日は研ナオコさんがいて。もう研さんがやりたい放題で、めちゃめちゃ笑い取って。内心なんでだよ、とはらわた煮えくりかえってましたけど(笑)、なんだかんだそれでもさんまさんは引っかかって覚えてくださってレギュラーになれて、その番組やってる最中に相方が辞めるっていうことがあったりして、そんなタイミングで『(踊る!)さんま御殿』(日本テレビ系)にも呼んでくださったんですよね。ロケしか仕事がない俺にスタジオトークをさせてくれたのはさんまさんなんです。当時、スタジオの仕事は『さんま御殿』だけでしたから。でも、『さんま御殿』でやれるってことは、日本中のどの番組でもやれるって自信につながったので、本当にありがたかったですね。あれがなかったらどうなってたかなと思います」
子どもの頃から見続けたテレビのレジェンドに愛されるのは、自然体で無理なく溶け込んでいく土田さんの姿勢がそうさせているのかもしれない。そして、マニアックさも、一般的な普通人としての感覚も持ち合わせる土田さんを形作ったベースには「昭和カルチャー」たちがあるのは間違いない。
土田晃之(つちだ・てるゆき)
1972年生まれ、埼玉県出身。お笑いコンビ「U-turn」解散後、ピン芸人としてバラエティを中心に様々な番組で活躍中。ガンダム、家電、ゴルフなど趣味も多く、老若男女から幅広い支持を集める。多くの芸人を世に出した「華の昭和47年組」でもある。
【イベント情報】
土田晃之×鈴木おさむ
『僕たちが愛した昭和カルチャー回顧録』刊行記念オンライントークショー
出演者:土田晃之、鈴木おさむ
日時:2025年9月5日(金)19時〜20時30分(予定)
配信期間:2025年9月5日(金)19時〜~9月19日23時59分(金)(アーカイブ視聴可)
『僕たちが愛した昭和カルチャー回顧録』単行本付き配信チケット価格:1,815円
主催:リアルサウンド ブック編集部
https://realsound.jp/book/2025/08/post-2126320.html