いつの時代も美しく前を向き、世の憧れである松雪泰子。だか彼女のように30年以上も第一線で活躍できる表現者でい続けるのは、並大抵ではない。今秋、音楽劇『エノケン』で“昭和の喜劇王”こと榎本健一に寄り添った、二人の妻の生涯を演じる松雪のTHE CHANGEを聞いた。【第2回/全3回】

「芸術は好きでしたが、もともとは自分が表に出て何かを表現するより、自分でゼロから物語を執筆してみたり、作品を作ることが若いころからの夢でした。だからいまでも、書かれた物語に忠実にお芝居をしたい、という欲求が強いのだと思います」
こう語る松雪の俳優デビューは24年前、1991年のドラマ『熱血、新入社員宣言』(フジテレビ系)。早くも連続ドラマレギュラーをつかみ、2年後の『白鳥麗子でございます!』(フジテレビ系)では、いかにもなお嬢様役がはまり役に。たちまちに90年代のトレンディ女優の一角を占めるが、その裏で泥くさく芝居を学んでいった。
「俳優の大先輩である、劇団俳優座の野中マリ子さんの塾(野中塾)に通っていて、そこで演劇が総合芸術だと、身を持って学ぶことができました。先生のカバン持ちもしながら、電車の中で台本を読み込んだり、舞台のお手伝いもしました。それが上京したての、10代のころです」