ドラマの大ヒットで忙しい最中、実は芝居の礎となる大きな経験をしていた

──野中マリ子さんというと、昭和40年代から平成まで、映像から舞台まで長く活躍されていた方。華やかそうなあのころの松雪さんも、そんな経験をされていたんですね。

「そうなんです(笑)。ドラマの現場と並行して、俳優座劇場の稽古場で、ちょこんと座りながら先生のお稽古を見させていただいたり、先生の能の一人芝居のお手伝いもしました。お芝居についての基本的な概念を教えてもらいました」

松雪泰子 撮影/有坂政晴 ヘアメイク/中野明海 衣装/舞台衣装

──その後も数多の作品に出演されてきましたが、何か強く記憶に残っている作品はありますか。

「段階を経て成長していったと思いますが、忘れられないのは舞台『るつぼ』(2016)での経験です。原作がアーサー・ミラー、演出がジョナサン・マンビィさんで、まずお稽古の前に2週間をかけて、テーブルディスカッションで戯曲を読み込んでいったんです。そこで俳優同士のこの戯曲への解釈をぶつけ合うことができて。物語の中で展開されている情景も、その場でみんなが共有していったので、全てを血肉にして稽古に向えました」