人気アイドルからデスメタル、萌え系まで、どんな楽曲も歌いこなす山下絵理さん。“仮歌の女王”の異名を持ち、数えきれないほどのアーティストたちをガイドボーカルで支えてきた。
約25年間、黒子に徹してきた彼女が、「作曲家・三木たかし生誕80周年記念プロジェクト」の歌手として大抜てきされ、三木たかし氏の秘蔵曲で今夏デビューした。ドラマチックな半生をたどってきた山下さんの“THE CHANGE”を語ってもらった。【第5回/全5回】

「仮歌の女王」という異名を取り、多いときは1日に17曲も仮歌を入れるほどガイドボーカルとして引っ張りだこだった山下絵理さん。
2023年、大好きだった仕事と最愛の人の両方を失った。息もできないほどの苦しさに襲われたが、見事に復活を遂げた。その鮮やかな逆転劇=“THE CHANGE”はなぜ起きたのか。
「私は、ときどき凝り固まった自分の中の常識を壊すことがあるんです。例えば、20代では、企業に就職して社会に適合している大学の学友たちは偉くて、拠(よ)り所のないフリーランスの私は、彼らに劣っていると感じていました。自分を負け組だと思っていたんです。
でも、私の仕事と会社勤めしている同級生たちを比べること自体に、無理があるんですよね。同じ土俵に立ってすらいないのに、うらやんだり自分を卑下(ひげ)する必要はないんだと気づいてからは、すごく気持ちが楽になりました。視点を変えることで、自分がいままで気づいていなかった、新しい世界が見えたりするんです」