人生が豊かになる秘けつは、案外身近に隠れているのかもしれない

 昔から「木を見て森を見ず」という。近視眼的になりすぎると、自分を見失ってしまうということを、山下さんは経験を通して私たちに伝えてくれた気がした。

「なにも難しいことをするわけじゃなく、空が青くてきれいだなとか、これまで気づかなかったことに気がつくと、人生が豊かになる気がするんです。目の前のことに集中することも大切ですが、それだけでは息苦しくなりますよね。視点をちょっとだけ広くしてみたり、立ち止まったりすることも、ときには大切なのかなって。
 私自身、『人生何もしない人』宣言をしてからは、ただ雲を眺める時間や、キャンドルの炎を見つめるだけの時間がすごくいとおしくなりましたし、そうした時間に癒やされています。すべてを手放し、何もしないのは勇気がいることだし、すごく難しいことでもありますが、そうすることで私はどうしようもないくらいつらい時期から抜け出せましたし、人生が大きく“THE CHANGE”したんです」