コミカル、クール、ニヒル……阿部寛といえば、どんな役も絵になるトップ俳優だ。今秋、阿部が挑むのは、ネットの炎上によって無実の罪を着せられるサラリーマンの逃避行。モデルから転身し、役者の道に“覚悟の半生”を投じてきた阿部寛のTHE CHANGEとは──。【第2回/全3回】

「20代は、演技で評価されるということがなかったですね。身長が189センチあるからって、背が高くてカッコつけた役しかこなかったです」
最新の主演映画『俺ではない炎上』で殺人犯の濡れ衣(ぬれぎぬ)を着せられ、ネットユーザーの追跡から逃げ回る中年男性・山縣泰介を感情むき出しで演じた阿部寛。いまでこそモデル出身の俳優は珍しくないが、『MEN'S NON-NO』などの雑誌モデルから俳優に転身した当時、演技は手さぐりだった。
「思えばモデルに応募する前、ドラマ『ふぞろいの林檎たち』(1983・TBS系でスタート、以後4シリーズを放送)が好きで見ていました。山田太一さんの脚本で、淡々と普通の日々が続くような展開が、いい意味で衝撃的だったんです。俳優さんの演技もナチュラルで、“俺にもできるかもな”と思ったのが、初めて俳優に興味を持った瞬間でした。山田さんのドラマって、“普通なところ”がいいんです」