コミカル、クール、ニヒル……阿部寛といえば、どんな役も絵になるトップ俳優だ。今秋、阿部が挑むのは、ネットの炎上によって無実の罪を着せられるサラリーマンの逃避行。モデルから転身し、役者の道に“覚悟の半生”を投じてきた阿部寛のTHE CHANGEとは──。【第3回/全3回】

阿部寛 撮影/有坂政晴 ヘアメイク/AZUMA スタイリスト/土屋詩童

「あっという間に仕事がなくなった」という危機の20代が過ぎても、阿部は必死だった。「30代は仕事の量も一気に増えて、いちばん頑張った時期です」と振り返る。

 その入り口になる1993年、29歳のときに主演した故・つかこうへいさんによる戯曲『熱海殺人事件〜モンテカルロ・イリュージョン〜』が、30代を通じてのライフワークになった。デビューからこのころまでの思い出は、自著『アベちゃんの悲劇』(集英社・1998年)でもユーモアたっぷりにつづられている。

「20代にモデルとしてこの世界に入ってきて、背の高さもあってカッコつけた役しか入ってこない。何年かは“これはどうにかしなきゃな”と悩みました。オーディションでつかさんに拾って、鍛えてもらったころから、本当の意味で俳優としての第一歩が始まったと思います」