蜷川幸雄との縁「たまたま舞台の稽古場を見に行ったのが始まりでした」
40代になると、阿部はもうひとりの名作家とタッグを組む。故・蜷川幸雄さんが演出する舞台『新・近松心中物語~それは恋』(2004・2005)、『シンべリン』(2012)、『ジュリアス・シーザー』(2014)などで、重要な役どころを好演していったが、そのきっかけも偶然からだった。
「“すごいものを見た”っていう瞬間それ自体が、人生に影響します。蜷川さんとの縁も、たまたま舞台の稽古場を見に行ったのが始まりでした。そのころは“蜷川さんの舞台なんて、自分はここに呼ばれることもないだろうな”と思っていました」
──稽古場で、どんな光景を見たのでしょうか?
「ちょうど蜷川さんが俳優たちに芝居をつけているのを見ることができて。“すげえな”と見ていたら、もう俳優がまったく別の人間に見えてくるんです。“あの人、ふだんは温厚なのに、芝居ではこんな凶暴な人になれるのか”、“すごいな、俺も変わりたいな”、“いいな”って」
