「“もう、ここから一歩も下がりたくない”と役者として覚悟を決めて…」
──『熱海殺人事件』の軸はミステリーでしたが、阿部さんのために脚本も変わり、演じる主人公の木村伝兵衛部長刑事の設定も変わりました。女装しながら歌うシーンもあり、それまでと比べても、かなり異色な役を経験されたと思います。
「あの役で、初めて演技をほめてもらえました。もしかすると、つかさんが裏で根回ししてくれたのかもしれないけど(笑)。それまで芝居を評価されたことがなかったので、本当にうれしかったです。“もう、ここから一歩も下がりたくない”と役者として覚悟を決めて、ひとつひとつの作品に責任感が出てきました」

──30代は『熱海殺人事件』の再演が続き、36歳のときに『TRICK』(テレビ朝日系)がスタート。コミカルな上田次郎役でブレイクするなど、阿部さんの俳優歴でも重要なタイミングになったのでは?
「20代に比べれば、もらえる役柄もはるかに多くなりました。モデルをやっていたころって、セリフがないから表現するための武器も全然なかったんです。で、30代は連ドラを何十本も経験して、しかも全然違うキャラクターばかり任せてもらえて。人間味があって、深いことを要求される役をもらえるようになったので、これをチャンスに表現者として仕事を獲り続けるぞ、と思って作品に向かっていました」