一番のゴール「ワールドカップに日本代表監督として行って優勝する」
「2022年のカタールW杯で日本代表入りを再び目指したのも、あの舞台でもう一度、何かをやらないと終われないという思いから。W杯で監督をしたいのは、自分があの大会に選手として出ることができなくて残してしまった悔いを、監督として出ることで消し去りたいから。ワールドカップに日本代表監督として行って優勝するというのが、一番のゴールです。たぶん今は、元選手の岡崎ということでメディアにも扱ってもらい、人々にも記憶されていると思うんですけど、監督として活躍して、皆さんの記憶を“上書き”したいですね」
この「悔い」こそが、岡崎を日本代表監督という新たな夢へと駆り立てているのだ。また、この夢がかなうことで、これまで岡崎が海外でのプレーを通じて肌で感じた、海外のクラブや選手、現地のファンが抱いている日本人選手に対する「思い込み」や「扱い」も、改善されるはずだという。
「日本人は、欧州で軽く扱われるというのが僕の主観なのですが、他の日本人選手も経験しているかもしれません。海外に行ってサッカーをすると、人生で最初のサッカーの試合をやらされている気分になります。日本から海外に行くと“どれだけお前はできるの?”と試されている感じになるんです」
たとえば、ブラジル人選手だったら「うまい」というイメージが先行するが、日本人選手の場合は違う。「日本人は弱く見られているというか、真面目だし、うまく利用されるというところも、すごくある」という。
だからこそ、岡崎は次世代の選手たちに期待を寄せる。「日本人と言えば、明確にうまい選手が多いよね」と思ってもらえる存在になることを、岡崎自身も監督として目指しているという。そのためにFCバサラ・マインツもある。
現在、世界のサッカーの潮流が大きく変わろうとしている。日本代表にとっては、千載一遇のチャンスが訪れている。そう確信する岡崎の言葉には、指導者として新たな挑戦を続ける男の“強い意志”が感じられた。
第3回に続く
おかざき・しんじ 1986年4月16日生まれ、兵庫県出身。2005年に清水エスパルスに入団。2010年までストライカーとして活躍後、ドイツ、イングランド、スペイン、ベルギーでも挑戦を続け、レスター・シティFCの一員としてプレミアリーグを制覇。日本代表として3度のワールドカップに出場し、歴代3位となる50得点を記録した。昨年5月、ベルギー1部シント=トロイデンVVで現役を引退。現在ドイツ6部のFCバサラ・マインツで監督を務める。感動を呼ぶゴールシーンから「一生ダイビングヘッド」、「魂のストライカー」などと呼ばれることも。