杉本コーチとの出会い「すべてが間違っていた」やってきたトレーニング

 清水エスパルス入団当初、岡崎を待っていたのは厳しい現実だった。長谷川健太監督からは「FW8人中8番目」という評価を受け、サイドバックへの転向まで勧められたこともあったという。

「その評価には、僕は入団当初ケガをしていたので、長谷川監督は僕のプレーを見ていなかった、ということもあったかと思います。当時、走るトレーニングだけはなんとかできていたので、そう言われたときは、なんとか見返してやりたいと思ったかもしれません」

 そんな状況を好転させる一つのきっかけとなったのが、インタビュー第1回でも、恩人として名前の上がった杉本龍勇フィジカルコーチとの出会いだ。

「僕がやってきたトレーニングすべてが間違っていたんです。それまでのトレーニングは20mを何回ダッシュするとかでしたが、そうすることで改善できる話じゃなかった。基本的な考え自体が間違っていたんです。そのときに、この人についていこうと思ったんです」

どんな無理な体勢からもゴールにねじ込む。気持ちの入ったゴールが岡崎慎司の真骨頂だった。撮影/渡辺航滋(Sony α1使用)

 岡崎が18歳のときに出会った杉本氏の指導方法は極めて独特だった。

「トランポリンで毎日、体重移動の練習ばかりしていました。トランポリンで跳ねて、どういう体重移動、どういう足のつき方がベストなのか、そういうことができるようになると、次の段階に行って。当時、杉本さんは浜松大学の教授もやっていたので、浜松大学に行って、杉本さんが指導していた陸上部の人の家に住まわせてもらって練習を続けました」

 効果はすぐには現れなかった。だが、3年後。岡崎は明確な変化を感じた。

「急にめちゃくちゃ足が速くなったわけではないですが、明確に変わったのが3年後です。プレーヤーとしても、スピードのほうも明らかに変わっていました。もう、急にこのシーズン、俺は行けるかもしれないというぐらい、体が軽くなった感じがしました」

2008年シーズン、リーグ戦27試合に出場した岡崎は、10ゴールを挙げる。