CM出演を上司に指摘されて…「世の中には似ている人がいますねえ」
副業禁止の会社だった。CM出演を上司が指摘すると「僕がCMに!? そんなわけないじゃないですか~! 世の中には似ている人がいますねえ」とごまかしつつ、素直に白状した。ひとり兵庫から仙台に来た小田井さんの現状をおもんぱかった上司は、「これ以上、派手にやらないなら続けていい」と副業に目をつぶってくれたのだ。
「なんなら、お客さんの会社の受付に行くと女の子がチヤホヤしてくれるし、会社としてもメリットがあったんですよ。でも、2回目のバレですね。お客さんから“おたくの社員、CMに出てないか”という連絡があって。そのCMでは声を出してしゃべってて、もうごまかせなかったんですよ。もう絶対にクビになると思ったのと同時に、会社を辞めるという選択肢が浮かびました」
当初は3年で地元に戻るつもりが、阪神・淡路大震災の影響で延期になった。会社からは「あと2年で戻すから」と言われていたものの上司が変わり、うやむやになっていた。そんなタイミングだった。
「28歳でした。当時は彼女もいて、“仙台で結婚して、仙台の人になる”という選択肢も見えたけど、僕は会社を辞めることを選択したんです。そうなると兵庫に戻って家業を手伝いながら、次にやることを探そうかなとなるんですが、その前に“一回も東京に行ったことがないままなのはイヤやな”と思って、いったん、東京に行ってみることにしたんです。30歳まで、と区切りをつけて、モデル事務所のツテで上京したんです」
上京したかった理由はシンプルなミーハー心だったというが、小田井さんのそれは一筋縄ではいかなかった。憧れていたのは東京特有のおしゃれでキラキラとしたものーーではなく、ギラギラとしたものだった。