お酒のために避暑地の別荘を買ったマニアも

「僕は各蒸溜所のお酒を一通り買っていく感じです。バーテンダー視点で、“このお客さんが好きそうだから”という目線で買うことが多いですしね」

ーーとんでもないマニアに会ったことはありますか?

「いきつくところはだいたい一緒なんですが、“それってどうなんだろう?”と思ったのが、バブル前後くらいから買い集めている方がいて。ウイスキーって日本酒とちがってそこまでの冷蔵設備はいらないんですが、昨今暑いじゃないですか。だからその方は、お酒のために避暑地の別荘を買ったんです」

山内「収納のために!」

「“たまにはみんなに飲みに来てもらおうかな”と言うけど、“そんな場所まで行かないよ!”とツッコミそうになります」

山内「行ってみたいですけどね(笑)。財があるからできることですよね」

「自宅にクーラー入れたほうが安いだろうって思います(笑)」

BARレモン・ハート店主の古谷陸さん

 日本酒を愛好する山内さんもこうした光景はおなじみだといい、「個人で日本酒を何本も所有している人が、定期的に会を開いたりしている」と話す。

山内「飲み会をやったり、有名ブランドの日本酒を何年もかけて1本ずつ買ってずらっとお披露目して会費を募るとか。ちょっとした仕事? みたいな(笑)。ただそういうことって特に鮮度が命の冷酒タイプを造る蔵元は喜ばないんです。寝かせる前提の日本酒ならいいんですが、そうでないと香りが萎んで不味くなることがあります。古酒も美味しいものはありますが、買ってすぐ飲んだほうが美味しい日本酒の場合、蔵元は青ざめるだろうなあって思います」

「醸造酒は劣化しやすいですからね」

山内「そう考えると、お酒に対してお金を払う人たちのほうが、マニア度が高まる印象です。私の知り合いには、お店をやっているわけではないのにタンク買いする人もいます。毎年買って飲んだり寝かせたり、という話を披露していました(笑)」

「みんなさみしいんですよ。1人で飲みきれない量を所有するのは、飲み友達がほしいから、なんですよ」

山内「なるほど(笑)。でもたしかに、コミュニティの場や婚活の場としてお酒の場が存在することはありますよね」