旅行先で飲むその土地のお酒ってすっごく美味しいです

「シャンパンなどは理想を言えば最初から最後まで冷蔵保存で、保管コストが高いんです。が、ディスカウントストアで常温で置いてあったりする」

山内「たしかに、よく見ますね」

「僕たちにとってはとんでもない光景です。それが2、3万円で売られている。で、高い酒という認識で飲むと、“こんなもんか”という感想になって広がらない。本当はもっと美味しいのに。もったいないことだと思います」

山内「信用できるお店に出会うのが一番いいですね。あとは、旅行先で飲むその土地のお酒ってすっごく美味しいですよ。旅ですね、旅のついでに飲んだり、美味しい日本酒を飲むために旅するのもいい! 酒が生まれた産地に近い場所で飲むものほど美味しい酒はありませんから」

 高いお金を出さないと飲めないお酒を飲んでみたくなるのは、人の性。だが、その土地の酒蔵が生んだ地酒を飲みながら、地産の食材をあてにするという一期一会な体験にこそ、プレミア価格以上の価値がありそうだ。

 そんな折、10月16日から22日まで吉祥寺リベストギャラリー創では「BARレモン・ハート展」(入場無料)が開催されている。古谷三敏の原画でたどる、お酒と人の物語。

(つづく)

古谷陸(ふるや・りく)
1990年9月13日生まれ。幼少期より祖父・古谷三敏の代表作『BARレモン・ハート』に影響を受け、学生時代からお酒の歴史や文化を学ぶ。高校・専門学校在学中にバンド「ゴールデンボンバー」のローディーとして「鶏和酢里紅」としても活動。2015年より東京・大泉学園の『BARレモン・ハート』を継承。現在は古谷敏三作品の管理を行いながら、バーテンダー、ブランドプロデューサーとして活動中。

山内聖子(やまうち・きよこ)
1980年生まれ、岩手県出身。呑む文筆家、利き酒師。22歳のときに飲んだひと口の日本酒がきっかけで魅力に開眼しライターの道へ。2011年より週1度、日本酒バー「后バー有楽」のママを務める。著書に『蔵を継ぐ』(双葉文庫)、『いつも、日本酒のことばかり。』『夜ふけの酒評 愛と独断の日本酒厳選50』『日本酒呑んで旅ゆけば』(3冊共にイースト・プレス)、新刊に『酒どころを旅する』(イカロス出版)。