奈津子という役は、儚い結晶のような存在

「台本を読んだ瞬間は、奈津子がどういう雰囲気の女性なのか、原作に存在しないぶん、やっぱり解釈が難しいと感じました。じっと佇んでいる場合も、悲しげなのか、意思を持っているのか、戸惑っているのか。台詞に関しても、量が少ない分、言い方によって人物像が変わると感じました」

ーー宮田奈津子は劇中ではほとんど笑顔を見せていないのが印象的だ。

「奈津子という役は、儚い結晶のような存在だと思います。日本の女性らしさの結晶だったり、桂介にとってはお母さんへの想いも含めた愛情の結晶だったり……儚くて透明感のある女性像として捉えていましたが、一方で、結晶だからこそ、一見儚くでも“強さ”があると思うんです。その強さが、未来を救ってほしい。演じた後も、そう願っています」

ーー役作りの部分でいうと、いかにして原作にない映画オリジナルキャラを一から作り上げていったのであろうか。

「私の場合は直感で演じることが出来ないので、ひたすら役のことを考えるしかないんです。好きな食べ物とか、どんな音楽を聴くんだろうとか、衣裳から想像できる好きな色とか、そういった台本には描かれていない“役の個性”を考えています。あとは、役の過去を埋めることを考えます。ただ、これは私自身の予想でしかないので、現場に入った瞬間、“あれ? 違うな”と思うこともあるんです。ご一緒する方の演技によっても変わるので、決め過ぎず、柔軟な変更も想定しながら考えていきます」

ーー桂介との向日葵畑でのシーンはとても印象的だ。

「撮影したのは去年の夏だったんですけど……ものすごく暑かったんです!!! 向日葵の場面を撮影するために向日葵畑に行ったら、向日葵がクタッとなっていたくらい暑すぎたので、現場にいる人もみんな向日葵と同じようにクタッとなっていました。それでも、坂口(健太郎)さんはいつも元気でした! それってすごく大事なことなんです。座長がどんな空気を作るかというのは、座組の全員に影響することなので、暑い中でも座長に元気をいただいていました」

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