コンサートが終わったら、フェリーに飛び乗って逃げちゃったの 

 後に獄中結婚することになる藤本敏夫と出会ったのも、そのときです。藤本は学生運動の活動家で、逮捕と釈放されるのを繰り返していました。72年に収監されたとき、「刑期を終えてから、結婚を申し込みにいく」って約束していたのですが、すぐに子供ができていたことが分かるんです。そこで獄中結婚となったのですが、意外にも家族も仕事の仲間も否定的な人はいませんでした。みんな、「素晴らしい選択だ」って。

加藤登紀子 撮影/柳敏彦

 ただ、これは『知床旅情』で紅白に出た翌年のこと。だから仕事もいろいろと入っていて、いつか世間に発表しなくちゃいけないって考えていました。そんなときに、女性週刊誌にバレてしまう。

 神戸でのコンサートの開始直前に記者から「話を聞きたい」って言われて、私は「分かりました。コンサートが終わった後にゆっくりお話ししましょう」って言ってね。それでコンサートが終わったら、フェリーに飛び乗って逃げちゃったの (笑) 。もちろん、事務所と相談して、翌日にしっかりと記者会見を開いて発表をすることにしましたけどね。

 藤本のどんなところに魅力を感じていたか? 恋をすることに説明なんかできないわよ (笑) 。ただね、藤本はすっごくお酒が強いんです。私もお酒は大好きなんですよ。だから互角に飲める女だって気に入ってもらえたとは思います。

 藤本とは2002年に死別しましたが、お酒が好きな私は今年も『加藤登紀子コンサート」を開催します。このコンサートでは、私もお客さんもほろ酔いになりながら楽しむことができるんですよ。

 ただね、最近は私もお酒を飲む量は減ってしまいました。人の倍ぐらいしか飲めなくなりましたね (笑) 。

加藤登紀子(かとう ときこ)
1943年、満州国ハルビン市生まれ。65年の東京大学在学中に『第2回日本アマチュアシャンソンコンクール』で優勝して歌手デビュー。66年『赤い風船』でレコード大賞新人賞。自作の『ひとり寝の子守唄』(69年)、森繁久彌のカバー『知床旅情』(71年)はミリオンセラーとなっている。宮崎駿監督のスタジオジブリ・アニメ映画『紅の豚』では声優としてマダム・ジーナ役を演じた。

「加藤登紀子ほろ酔いコンサート2025〈60周年 感謝祭〉」
年末恒例の日本酒を飲みながら歌う「ほろ酔いコンサート」。開場時間にロビーで日本酒の樽酒が振る舞われ、観客もほろ酔い気分で鑑賞することができる。今年も12月6日の京都劇場を皮切りに、全国6都市7公演を催す予定。詳しくは加藤登紀子公式HP(https://www.tokiko.com/)へ!