ハワイから来日して、わずか8場所で十両に昇進。現役時代は、184センチ、275キロの巨体を生かして、大関を39場所を務めた、小錦さん。引退後は、タレントに転身して、テレビ、相撲ショーのプロデュースなど、幅広い活躍を見せている。一昨年12月、還暦を迎えた小錦さんの「THE CHANGE」とはーー。【第3回/全5回】

小錦 撮影/有坂政晴
 
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 ヒザの負傷から、見事カムバック。

 関脇に復帰し、大関を狙う小錦は、1987年初場所から、好調さを持続していた。
 初場所は10勝、春場所11勝をマーク。大関昇進の基準は、3場所の合計勝ち星が33勝以上となっているため、夏場所で12勝以上を挙げれば、小錦は大関昇進の権利を得ることになる。
 勝負の夏場所、5連勝と好スタートを切った小錦だったが、大乃国、北勝海、益荒雄に破れ、10日目までに3敗を喫してしまう。

「あの時は目の前が真っ暗になったね。でも、そこから双羽黒、千代の富士の両横綱に連勝して、波に乗っていけたんだ。あとは全部勝って、12勝3敗。勝ち星としてはギリギリのところだけれど、あとは“天に運命を任せよう”って……」

 とは、小錦さん。

 そして、小錦の元に、吉報がやってきた。高砂部屋にやってきた大関昇進を告げる使者に、こう口上を述べた。

「謹んでお受けいたします。大関の名を汚さぬよう、稽古に励みます」。