心の変化を声だけで表現「声優は難しい」どんどん“ハマって”いったときの細田監督のアドバイス

ーー特に印象的だったシーンはありますか?
「ヴォルティマンドは死者の国でスカーレットを殺そうとするのですが、次第に心情が変わっていく。それは彼の心の中に、常に自分がやっていることへの違和感があったからなんです。声優は難しくて、そういった心の変化を声だけで表現しなきゃいけない。表情や仕草が使えないから、単調になりやすいし、機微を出そうとすればするほどに、どんどん“ハマって”いって、繊細な表現ができなくなりかけたんです」

――“ハマる”というのは、どんな状態ですか?
「技術的にやろうとしちゃう、ということですね。“声優としてもうまくできるんだぞ”と見せようとしちゃう。絶対にダメなんだけど、つい野心が芽生えちゃうんです」

――そこから、どのように持ち直したのでしょうか。
「そういう野心を見抜いて、細田さんがアドバイスをくださいました。『もっとやわらかく』、『もっと強く』とか、自分が思っていたこととは真逆だったりすることを教えてくださって。細田さんの演出に任せているうちに、役をつかむことができましたね」

 監督の「丁寧でわかりやすい演出に、安心して身を任せられた」と話す吉田さんのヴォルティマンドは、試行錯誤があったからこそ深みを増し、観る者の心をつかむことだろう。

 舞台で培われた確かな演技力で、さまざまな作品に出演し、いまや誰もが知る名優となった吉田鋼太郎さん。続けて話を聞いていくと、思わず「そんなことをしているんですか!?」と、つい声をあげてしまうような「意外な行動」をしていることが明らかになった。 

よしだ・こうたろう
1959年1月14日、東京都出身。蜷川幸雄演出の舞台では数多く主演を務め、16 年には「彩の国シェイクスピア・シリーズ 2nd」の芸術監督に就任。1999年に「第6回読売演劇大賞優秀男優賞」、2001年には「第36回紀伊國屋演芸賞個人賞」、2014年には「第64回芸術選奨 演劇部門文科科学大臣賞」をそれぞれ受賞。その一方で、映像作品では『半沢直樹』(TBS系)、NHK連続テレビ小説『花子とアン』、『おっさんずラブ』シリーズ(テレビ朝日系)で注目を集める。今年の出演作に、連続テレビ小説『あんぱん』(NHK総合)『となりのナースエイドSP2025』(日本テレビ系)、映画『ショウタイムセブン』『事故物件ゾク 恐い間取り』がある。

▪︎作品情報
『果てしなきスカーレット』
2025年11月21日(金)より全国公開中


スタッフ
監督・原作・脚本:細田守

キャスト
芦田愛菜
岡田将生
山路和弘 柄本時生 青木崇高 染谷将太 白山乃愛 / 白石加代子
吉田鋼太郎 / 斉藤由貴 / 松重豊
市村正親
役所広司

公式サイト
https://scarlet-movie.jp/

ⓒ2025 スタジオ地図

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