栄養指導に携わるためにトンガへ
殺人事件にいたっては「当時、10年間に1回しかなかった」というから、平和な国であることがうかがえる。
「あと、持っている人が困っている人に分け与えるので、飢え死にする人もいないんです。学校でも、お昼ごはんにパンを持ってきた人が周りの人に“どうぞ” と配るのが当然でした」
そんなトンガに暮らす人たちの行動原理は、「神の教えだから」、この一点に尽きるという。
「教えに基づいて暮らしている人たちと接して、“こういう考え方で生きていたら、こうやって分け与えることができるのか” という大きな気づきがありました」
ーーそもそもなぜトンガへ?
「私が何をしに行ったのかというと、家庭科教師として栄養指導に携わるためでした。トンガの人は身体が大きい人が多いのですが、当時は、すごく不健康に太っていたんです。昔は健康的に大きな体でしたが、サイクロンによる災害でニュージーランドからの救援物資が届き、それに羊の脂身が多かったそうで、その結果、みんな不健康に太っていったといいます」
生活習慣病が横行し、「平均寿命が50歳前後だった」ため、国を上げて健康的な食事や運動に取り組むことが推奨されるようになったという。
「高校の授業で生徒たちに“みなさん、食生活についてちゃんと考えましょう。じゃないと肥満が原因の病気で死んでしまいますよ” と話したら、同じ学校の先生から、 “死を否定してはいけない。死は悲しいことじゃない。イエス様の元に行くことを許される 、喜ばしいことなんだ” と言われて驚きました」