2007年のデビュー以来、次々とベストセラーを生み出し続ける小説家・湊かなえさん。11月27日には、宗教・宗教2世を題材とした29作目となる新刊『暁星(あけぼし)』を上梓した。とどまることなく豊かに表現し続ける湊さんの、THE CHANGEとは。【第5回/全5回】
小説家デビューは2007年、2年後には作家生活20年目を迎える湊かなえさん 。大学卒業後はアパレルメーカーに就職し、1996年から2年間は青年海外協力隊の隊員としてトンガで家庭科教師を務め、27歳で結婚した。小説家を志すのは、その数年後のことだった。「湊さんにとっての、THE CHANGEとは?」と問うと、「やっぱり、小説家になったことです」と即答するのだった。
「28歳で出産して、夫のローンで家も建てて、30歳の誕生日を迎えたとき、 結婚して子どもも生まれて家もあって、すごく、人生落ち着いたな。いや、落ち着きすぎかな? と思ったんです。来年の今頃はどうしてるかなとイメージすると、子どもの成長や夫の予定ばかりが浮かび、自分が主体になっているものがなにもなかったんです」
落ち着いた現状に委ねつつあった身を起こし、湊さんは挑戦へと立ち上がった。
「もうひとつくらい、人生の中で大きなものに挑めるんじゃないかなと思ったとき、淡路島に住んでいるので教室みたいなものはあまりないし、お金もかけたくないし、“家でできることってなんだろう” と考えたら、“私、パソコンを持っているけどまったく有効活用できていないな” と気づいたんです。じゃあなにか書いてみようかと、『公募ガイド』を買ってきて読んでみたら、脚本を書いてみたらおもしろいかも、と考えつきました」
このとき、すんなりと書き進められたのは、「頭の中にいつも映像があったから」だった。書き始めて半年後の2005年、湊さんは見事に第2回BSーi新人脚本賞に佳作入選したのだ。