怒りってパワーになりますから

 悔しさを糧に信念のまま突き進み才能を開花させるさまには痺れるが、湊さんは今も常日頃「悔しさ、しんどさ、イヤなことは小説に書いてやろうと思っている」と話す。

「怒りってパワーになりますから。小説家としてはネタにもなるので、いつも “怒り貯金”をしています。怒りが落ち着いてしまうので、ノートに書き出したりもしません。SNSにも絶対に書かないです。頭の中から出ていってしまいますから。
 SNSで誹謗中傷をしている人やいろんなことに対して否定する人って、もったいないなと思っているんです。そのパワーをなにかにぶつければ、もっとプラスに活かせるのに。こんなところに書いて満足するなんて。私みたいに小説を書かなくても、イヤなことがあった分だけ気分転換にいつもより遠くに行けるとか、そういうふうになれるのにな、と思います」

 原動力の使い方次第で、湊さんのような人生を歩めるのかもーーわたしたちにも、そんな可能性を垣間見せてくれたのだった。

湊かなえ(みなと・かなえ)
1973年、広島県生まれ。2007年『聖職者』で第29回小説推理新人賞を受賞。08年同作品を収録したデビュー作『告白』は第6回本屋大賞などを受賞し、売上累計385万部の大ベストセラーとなる。2014年、アメリカ「ウォール・ストリート・ジャーナル」紙のミステリーベスト10に、15年には全米図書館協会アレック賞に選出。2012年、『望郷、海の星』で第65回日本推理作家協会賞短編部門を受賞、2016年に『ユートピア』で第29回山本周五郎賞を受賞した。さらに2018年には『贖罪』がエドガー賞『ペーパーバック・オリジナル部門』にノミネートされた。

(作品情報)
『暁星』(双葉社)
著者:湊かなえ
発売中
定価1,980円 (本体1,800円+税)
判型:四六判
公式サイト: https://fr.futabasha.co.jp/special/minatokanae/