伝説の深夜番組『平成名物TV 三宅裕司のいかすバンド天国』(1989年2月11日~90年12月29日/TBS系)、通称「イカ天」は空前のバンドブームを巻き起こした。毎週土曜の深夜1時~3時という時間帯にもかかわらず、最高視聴率は7.8%という、いまでは考えられない驚異的な数字をたたき出した。
 その第3代グランドイカ天キング「たま」。ランニングシャツ姿でパーカッションを演奏した石川浩司は、バンドだけでなくイカ天ブームそのものを象徴する存在だった。
 バンド解散から20年。ミュージシャン石川浩司の「THE CHANGE」とはーー。
【第2回/全5回】

石川浩司 撮影/有坂政晴

ひと晩ですべてが変わった!

「僕らが出た3週目がね、たぶん一番視聴率のピークだったみたいで。土曜日の深夜だったんですけど、そのときの視聴率が7%だったんで、推定で700万人くらいの人が見てたってことらしいんです」

 東京郊外の駅前にある昭和レトロな雰囲気のレストランで「THE CHANGE」のインタビューに答えてくれた石川浩司さんは、「イカ天」出演時のことをこう振り返った。

 「イカ天」とは、1989年から90年にTBS系列で放送されていたアマチュアのバンドコンテスト番組だ。正式名称は『平成名物TV 三宅裕司のいかすバンド天国』といい、毎週土曜の深夜1時~3時という時間帯にもかかわらず、驚異的な視聴率をたたき出していた。石川さんは「たま」のパーカッション担当。ランニングシャツと短パンという格好で演奏する姿が、強烈なインパクトを残した。

「もう一晩ですべて変わった感じです。オンエアの次の日にメンバーの知久(寿焼)くんと知り合いのライブに行く約束を前からしていて、新宿駅で待ち合わせしたら、いろんなところで声をかけられたり、“キャーッ”と腰ぬかされたり、こんなにテレビの影響力があるんだというのを知りました。

 僕は一応ステージではランニングを着てましたけど普段はTシャツとかで、でも知久くんはステージも普段も全部同じ(笑)。だから、すぐに分かっちゃうんですよ。それまで全くの無名、というか誰にも認識されない状態から一晩でガラッと変わったんです」

 文字通り「ひと晩ですべてが変わる」という稀有な体験だった。まさに「THE CHANGE」といえるだろう。

 番組がスタートした1989年は激動の年だった。1月7日に昭和天皇が崩御し、昭和から平成に元号が変わり、6月に中国で天安門事件が起き、11月にはドイツでベルリンの壁が崩壊した。2月にスタートした「イカ天」は、バブル景気に沸く日本に巻き起こったバンドブームを象徴する番組となり、流行語大賞で大衆賞を獲得するなど一世を風靡した。