唯一、歌舞伎界以外から出演されていました

――八嶋智人さんですか?

「2019年に、『三谷かぶき 月光露針路日本 風雲児たち』という、三谷幸喜さんが書かれた歌舞伎に出させていただきました。歌舞伎といっても三谷さんの脚本ですから、現代的な要素も多かったんです。自分はそうしたお芝居が初めてだったので、セリフも動きもどうしていいかわかりませんでした。周りの方は経験がある方ばかりですから、全然ついていけなくて。その時、八嶋さんが、唯一、歌舞伎界以外から出演されていました。それで、三谷さんが八嶋さんを“染五郎のお世話係”みたいに指名して、ずっと付きっきりで演技指導してくださったんです」

――八嶋さんが染五郎さんのお世話係を!

「はい。お手本を見せてくださったのですが、八嶋さんは本当にいろんな引き出しを持っていらっしゃって、ものすごく自由に動き回る。八嶋さんしか目に入らなくなるくらいの縦横無尽さなんです」

――なんとなく頭に浮かびます。

「すると三谷さんが、“あれは悪いお手本だけど”と」

――え?(苦笑)。

「“でもやろうと思えば、台本になくても、ここからあれだけのことが生まれる。あれだけのことができるんだよ”と教えてくださったんです」

――なるほどぉ。

「稽古期間含めて2か月間、八嶋さんが本当に付きっきりで、セリフの言い方から何から全て教えてくださいました。こういう風にやるんだとすごく分かりましたし、自分でも感じるくらい変わりました。あの経験がなかったら、現代劇はできないと思うくらいに、ひとつ殻を破った感覚がありました」