現在舞台稽古の真っ最中。“山”から都会に降りてきて感じること

 東出が都会を離れて山に入ったのは、4年ほど前のこと。

「それまでは、家と現場の往復で、会うのは仕事の関係者がほとんど。それが世界のすべてだと思っていました。ところが、フリーランスになって山で生活をするようになると、まず人口密度がまったく違うんですね。密度は低いけれども、つながりは濃い。逆に、東京は密度が非常に高いけど、みんなそれぞれの世界があって、つながりは希薄な感じがします」

 俯瞰(ふかん)で見ることによって、東京という街、人との付き合い方、仕事との向き合い方に、それぞれ変化を感じるという。

「でもそれは、年齢的なこともあるかもしれません。若いころはやっぱり、背伸びをして、自分を大きく、良く見せたいという気持ちが強かったし、自分ばっかりが正解だと思っていました。
 一方では、“台本をやらなくちゃ……”と思いつつ、ダラダラ過ごしてしまうこともあって、でも取材では“この作品に心血を注いでいます!”と、なかば自分に言い聞かせるように虚勢を張ってみたり……。いまは“自分って大したことがないな”って思うようになりました」