「仕事のオファーがいったん全部更地に」そのときに気が付いたこと

 力が抜けてきたと感じたのは、16年公開の映画『聖の青春』で、実在の将棋棋士・羽生善治役を演じたころだという。

「このあたりから、頭で考えたことと、自分が表現したいことがだんだん合致してきて、18年の映画『菊とギロチン』のころには、カメラの前でナチュラルに、役としての呼吸ができるようになってきました。とはいえ、いまも日々、悩み続けてはいますけど」

 主演作が続き、人気実力ともに揺るぎないものになったと思われたタイミングで、俳優としてのキャリアに大きな転換期が訪れる。

「仕事のオファーがいったん全部更地になりました。だけど生活のためにお金は必要不可欠ですし、ありがたいことに、“東出に”と言ってくださる方がいました。そのとき考えたのが、これまでずっと役者の仕事は“ライフワーク”だと思ってきたけど、“ライスワーク”、米を食うためでもあるんだな、ということです」