人生は“暇つぶし”。その一方で「いまの生活には“自分は生きている”という実感がある」

 確かに、最近は“タイパ”や“コスパ”が良きことであるような風潮だが、余った時間を有意義に使えているかどうかは怪しい。

「もっと言えば、私が山で狩猟をやっているのだって、暇つぶしです。スーパーで買う肉じゃなく、自分で殺した肉を食べるという時間の過ごし方をしているだけで、人が食うために獣が死んでいるということに変わりはない。ただ、私にとって、いまの生活には“自分は生きている”という実感があるというだけのことです」

 ただ、猟師ゆえの葛藤もある。

「さっき、桃畑を荒らすクマを撃ったという話をしましたが、“あの畑に実った桃はすべて人間が食べるのだろうか?”という疑問がありました。“もしかしたら高級ラウンジのフルーツ盛りになって、食べられずに捨てられてしまう桃もあるのではないか?”、“そもそも、現代人は栄養が足りているわけだから、桃を買って食べるということ自体が贅沢であり、暇つぶしなんじゃないか?”、“その桃を守るために、害獣駆除といって殺し、その肉を食わずに捨ててしまうのは、どうなんだろう……”というように、暇つぶし論が加速してしまいました」